井之上隆志君からの手紙3・1981年7月頃(当時20歳・じろりん28歳)
(井之上隆志、初舞台のチラシ・1980年7月)
前略、とりあえず自分は元気です。
ジローさん頑張ってますか。毎回天理時報特別号を送って
くれて有難うございます。
暑いスね。ジローさんと付き合い始めたの去年の今頃でしたヨネ。
1年たちます。
今度、9月に「標の会」という団体の公演に協力する形で
出演します。
標の会というのは うち(GOOD MAN)と同じケイ古場を使っている団体です
藤井さんが今度の公演を作・演出するので自分とミノさんが
出れる様になったのですが 毎週火曜日 俺だけ
その団体と一緒にレッスンしているのです 藤井さんの勧めで。
(火曜日は藤井さんが講師ですので)
そこで藤井さんは俺の事メチャクチャ良く言うんです
どの様に良く言うかというと・・・・俺の口から言うとまた違った
ニュアンスに受け取れるかも知れませんが
『井之上は個性的だ芝居に自分を出している』etc・・・。
本当の事をいうと俺としては全くイヤなのです。
GOOD MANをやめた連中は他のプロダクション、あるいは劇団
で頑張ってます。 なのに俺はGOOD MANの中で
フワフワとやっているみたいな気がして。
そういうのって原因は俺の中にある・・・!!というのは
判っているつもりです。
ジローさんは『人を気にしすぎる・・・』といいました。
たしかに人を気にしてました。でも・・・俺って人間がセコイのかな
気になるんですヨネ。
GOOD MANをやめて劇団GAYAに入った友達が
いろんな事話してくれます
こういうレッスンやってるとか今度はこういう仕事がある・・・とか
俺とコンビを組んで歌を唄うといっていた小林さん。その人も
やめて、どっかのプロダクション、たしかナベプロかどっかには入りました。
俺に言います その人「飯食えなヨ 井之上、そのままじゃ」
「仕事がとれないだろ井之上、ダメだヨ、ままごとじゃない それじゃ」
GOOD MANに そういう事を望んでるのじゃないんです。俺は、
ああ 俺 何が書きたいのかわからなくなった。
ジローさん、俺いいかなこのままで。
公演の時 皆に良かった良かったって言われた自分、あれが
全部ウソに思えて、結局 誰かのコピーの様に思えて、
全然進歩ないんですヨ 進歩したい、本物になりたい。
飯食いたい、その前にいっぱい良い舞台をふみたい。
俺って口だけネ。立派なの。
このまんま ずっと平行線のまま行きそうな気がして。
今のGOOD MANのレッスンに毎月 会費払ってるのって正直言って
馬鹿らしい気がします
それより大切な時間が無駄に過ぎていくのが。
無駄にしてるのは自分なのかな、
無駄だと思ってるの俺だけかな、
本当は無駄じゃないのかな。俺はそんな全然 何も出来ない人間
なのに、今の状態が恐い。
いつも いつもゼロにもどろう もどろうと思ってるんだけど
ゼロがどこにあるのか判らなくなってしまった気がする。
ちっくしょう頭に来るなァ、本当に頭に来る。
どういう役者が金とれる様になるんだろ。負けたくない俺は、絶対。
絶対負けたくない。誰にも、ちくしょう
負けたくない などと考える自体もう負けてるのかな。
ヨソが気になる。もっと俺は 俺よりスゴイ人間がいっぱい いる中で
もまれたい。
ジローさんが もしGOOD MANやめてどっか行けば・・・といったら
俺はまた なやんでしまう、俺はスゴイ弱い人間だから。
「あっせてるんじゃない井之上。」あせりますヨもっともっともっとレッスンやって
もまれてもまれて、時間を有効に使いたいもの。
今のGOOD MANじゃダメな気がする、だけどGOOD MANをやめたくない
GOOD MANが全てじゃないのはヨク判ってる、
だけどGOOD MANが好きだ。久野さんが居る、ミノさんが居る。
今 俺がやめたら スゴイひきょうな事だ、
『アッやっぱり井之上も・・・』先にやめて行った連中に言われる。
『なっそうだろ、GOOD MANはダメなんだヨ』そんな事言われる。
絶対言わせない、そんな事言う奴ブッ殺してやりたい位。
GOOD MANが 俺の居るGOOD MANが
BIGにメジャーになったら どんなに素敵だろう。
このままじゃなれない、じゃあどうするのか・・・判らない、
俺が考える事じゃないんだヨ そんな事。
俺はただ劇団員で芝居やって歌を唄ってればヨカッタはず。
そんな事を考えなければならなくなった何かに腹がたつ
ちっくしょう、 だってこの世には俺よりスゴイ奴イッパイ居るもの。
それが皆、BIGになろうって頑張ってる。
俺はGOOD MANで頑張りたいヨー。
この前の手紙と実質的には全く内容の同じ
手紙だったりして、
ホントに俺って進歩がない。
もっと言いたい事 たっくさんあるんだけどなァ、
ジローさんが東京に居たら 俺 絶対に泊まりに行ったと思う
2、3日分の着換え持って。
(市ヶ谷富久町にあった、じろりんのアパート)
今 金ないんです、だから金が入ったらTELしますネ。
〝頑張る〟って言葉が非常にウソっぽく軽くテキトーに聞こえます
今の俺の口から出ると。
明日はダンスのレッスンです、両足が〝ベター〟と床につく様に
なりましたヨ・・・・・・・・・・・・・・・
また手紙書きます
返事下さい 待ってます
内容メチャクチャですみませんでした。
尾崎ジロー様
井之上隆志
「井之上君が描いたチラシのイラスト」