井之上隆志君が、所属していた「劇団カクスコ」は、最もチケットが取りにくい劇団と言われていた。
「劇団GAYA」所属メンバーにより、劇団GAYA解散後の1987年に結成され、1998年に第33回紀伊國屋演劇賞を受賞し、2002年1月20日をもって解散した。
残念ながら、私はもう東京を離れていたので「劇団カクスコ」の存在も井之上君の活躍もリアルタイムでは知らない。
20年後、私の留守中に電話があった。「東京でジローさんに大変お世話になった井之上です。今日、明日と姫路で演劇の公演がありますので、是非見に来て欲しいのですが・・・」とのこと。
かくて、2004年の春、井之上君と奇跡の再会をした。井之上君43歳、じろりん50歳だった。
東京時代、私の後をいつも金魚のフンみたいに付いて来て、あちこちいつも連れまわしていた井之上君だ。
それは、加藤健一事務所の『すべて世は事も無し』という芝居だった。客席は超満員で、彼は女優の『山口果林』さんと夫婦役でインテリの老人役を好演していた。
終わってから「ジローさん、ドキドキしながら観てたでしょう。」と彼が言う。芝居を始めた頃しか知らない私は確かにドキドキしながら観ていたが、素晴らしい好演に驚くと共に涙が出た。
昨夜、YouTubeで初めて「カクスコ」の芝居を観た。さわりだけ観ようと思っていたが、余りにも面白すぎて、「空き室あり」という芝居の0~11まで、観てしまった。
「空き室あり」カクスコ
再会した時、今ではど素人の私に「ジローさん、また一緒にやりましょうよ。」としつこく言うので、不思議に思っていた。
こんな芝居をもう一度、やりたかったのだなと、今日やっと分かった気がした。