俳優『井之上隆志』その2
平成16年、二十数年ぶりに再会した井之上君はたくましく、立派な役者になっていた。会って話すうちに、懐かしい思い出のシーンが次々とよみがえってきた。私より七歳年下の彼は、出合った頃十九歳だった。
サラリーマンをやめて右も左もわからないままこの世界へ飛び込んで来たところだった。ちょっとばかり、先輩の私をいつも、頼りにしていてくれた。
姫路公演で市民会館の楽屋を訪ねた時も同室の役者さんに「私の恩人です」と紹介してくれた。二十数年ぶりに彼に会って、開口一番聞いたことは「役者だけで食っていけてる?」すると、彼は「はい、今はなんとか食っています」「それはよかったなァ。」と、心から思った。考えてみれば、「二十数年もこの道一条に通っているのだから当たり前の事だなァ・・。」と後になって気がついた。
そういえば、私が芸能界を辞めて姫路に帰って来て程なく、彼が姫路まで訪ねて来てくれた事があった。
それから二十数年間まったく連絡はなかった。引越しの時、住所録を無くした事と、忙しくなった事が原因だったそうだ。彼が、東京で活躍している事はまったく知らなかった。インターネットで『井之上隆志』を検索してみたら、舞台・テレビ・映画でも活躍しているし、CMや声優としても頑張っている。
ドラマの『ラブジェネレーション』ではキムタクとも共演していた。
彼と再会して、約束した事が一つあります。それは「私は七十歳になったら再デビューする。」ということだ。「その時は、一緒にやりましょう・・・!」と井之上君が言ってくれた。
今は普通のオッサンだけど、「約束したからには、やるしかないな!」
(この時、じろりん50歳、井之上君43歳)